⽶住宅株が最⾼値圏供給難と⼈⼝増、続く売り⼿市場

 ⽶住宅株

2023/11/28 5:37 (2023/11/28 7:03更新) ⽇本経済新聞 電⼦版

【ニューヨーク=野⼀⾊遥花】⽶国の住宅メーカーの株価指数が最⾼値圏で推移している。⾼⾦利に伴う中古住宅の在庫減に加え、⾦融危機後から続く新築の供給不⾜と⼈⼝増による需給の⻑期的なミスマッチによって、新築価格が過去10年で1.5倍に⾼騰するなど、売り⼿市場が続く。住宅価格は消費者物価と連動性が強く、⽶国の⾦融引き締めの⻑期化につながる恐れもある。

主要な住宅建設や建設資材メーカーなどで構成する「S&Pホームビルダーズ セレクト インダストリー インデックス」は24⽇時点で8281と、21年12⽉の過去最⾼値にあと5%程 度に迫っている。23年初めと⽐べた伸びは約4割と、S&P500種株価指数など主要な株価指数の上昇率を⼤きく上回る。

株⾼を⽀えているのが堅調な新築住宅販売だ。27⽇に⽶商務省が発表した10⽉の新築住宅販売件数(季節調整済み、年率換算)は67万9000⼾と、前年同⽉⽐17.7%増えている。新築 住宅価格の中央値(10⽉時点)は40万9300ドルと、10年前と⽐べて55%上昇している。

堅調な販売と価格上昇によって、住宅メーカーの収益性は⼤きく改善している。最⼤⼿のDR ホートンの今期の売上⾼EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)率の予想は17%と、5年前から5.3ポイント上昇、同じく⼤⼿のパルト・グループは22%と8.5ポイントも伸びる。

⽶連邦準備理事会(FRB)の利上げに伴い住宅ローン⾦利は上昇し、⽶抵当銀⾏協会(MBA)によると、主要な30年固定の住宅ローン⾦利(週平均)は7.41%と過去2年で2.3倍に上昇した。この環境下で新築住宅の販売が堅調なのは中古住宅の在庫不⾜がある。

⽶国の住宅販売の9割は中古住宅が占めている。今住宅を売却すれば、過去の低⾦利下で組んだローンを⼿放し、新たな住宅を購⼊するため⾼⾦利のローンに組み替える必要があり、売却が鈍っている。中古住宅の在庫不⾜から、新築に顧客が流れている状況だ。

在庫不⾜の根底には、リーマン・ショック後から続く新築の供給不⾜と⼈⼝増加という、⻑期的な需給逼迫の影響も⼤きい。22年の住宅着⼯数は155万⼾と09年を底に増えているものの、05年のピーク(約200万⼾)を⼤きく下回っている。「建設資材や⼈件費の⾼騰が住宅メーカーの重荷になっている」と、ペンシルベニア⼤学ウォートン校不動産学のスーザン・ウォッチャー教授は分析する。

移⺠の流⼊を⽀えに⽶国の⼈⼝は増え続けている。⽶国の推計⼈⼝は23⽇時点で約3億3600 万⼈と、00年から約5000万⼈増えた。年齢別で最も⼈⼝が多いのが30〜39歳と、住宅需要が⼤きい世代が占める。ウォッチャー教授は「コスト⾯の負担で供給が鈍る上、⼈⼝の増加でさらに需給のバランスが崩れている」と解説する。

その結果、⽶国の全住宅数に占める売却可能な住宅在庫の⽐率は0.8%と、05年以降で最も低い。在庫が極端に少なく、住宅メーカーなど売り⼿に優位な状況が続いている。24年はFRBによる利下げの可能性はあるものの、⾼⽔準の⾦利が続けば、住宅ローン⾦利も⾼⽌まりしうる。中古住宅が市場に出回りにくい状況は変わらず、新築への需要は今後も底堅いとの⾒⽅が多い。

FRBの⾦融政策への影響も⾒逃せない。借家の家賃や持ち家を借家とみなした場合の帰属家賃などの住宅費は、⽶消費者物価指数(CPI)の構成要因の3割分を占める。10⽉のCPIの前年同⽉⽐の上昇率が3.2%に対し、住宅費の伸びは6.7%に及ぶ。

⾜元で住宅費の伸びは落ち着きつつあるものの、在庫不⾜が解消しなければ、今後も住宅費がじりじり上がる可能性はある。2%の物価⽬標の障壁になれば、FRBは⾼⽔準の政策⾦利の維持を迫られる。住宅販売だけでなく、景気全体にも影響を及ぼしかねない。

⾼⾦利で住宅需要そのものが⼤きく落ち込めば、新築販売への影響も避けられない。多くの業者は⾦利の⼀部負担や住宅の⼩型化など、実質的な値下げが広がるなど、メーカーの収益性が悪化する恐れはある。