くら寿司がアメリカで急成長 –

現地の文化に合わせた戦略が、くら寿司の急成長を支えています

米国市場で「くら寿司」が旋風を巻き起こしています。2024年、オレゴン州に新しくオープンした店舗では、週末に2~4時間待ちの行列ができ、テキサス州では開業初日に8時間待ちになるなど、その人気は止まりません。現地の文化に合わせた戦略が、くら寿司の急成長を支えています。

くら寿司は2008年に米国法人を設立し、翌年に1号店をオープンしました。以降15年で66店舗まで拡大し、日本の外食企業の中でアメリカ市場における最成功事例の一つとなっています。

特に2020年以降、競合が撤退するなかで急成長し、万博の店舗でも「135メートルの回転レーン」という自社最長のレイアウトを導入するなど、攻めの姿勢を見せています。

くら寿司の人気の背景には、エンターテインメント性を重視した戦略があります。アメリカでは、日本でも人気の「ビッくらポン!」を応用し、15皿で必ず景品がもらえる仕組みを導入。ギャンブル規制を考慮し、確実に景品を提供する形にすることで、家族連れの心を掴んでいます。

また、寿司メニューも現地の嗜好に合わせて調整されています。エビマヨとアボカドを使った「ゴールデンクランチロール」は、サクサクした食感が受けて大人気。こうしたメニュー開発には、5年間のトライアンドエラーが必要だったと、社長の姥一氏は語ります。

くら寿司は、初期段階では高級住宅街のビバリーヒルズ近くに店舗を構えましたが、客が集まらず1年で撤退するなど、失敗も経験しました。しかし、ターゲットを郊外のショッピングモールにシフトすることで成功を収めています。

また、元Shake Shackの財務責任者など、米国の優秀な人材を獲得することにも成功し、店舗展開を加速させています。

現在、くら寿司は300店舗の展開を目指しています。物流面の課題もあり、日本と同じように中央での一括調理が難しいため、各店舗で魚を加工していますが、日本の卸業者との提携で対応しています。

株価は公開価格の6倍に達し、時価総額は約9億ドルに上り、日本の「コメダホールディングス」に匹敵する規模となりました。

くら寿司は、日本の回転寿司の魅力を維持しつつ、現地市場に適応したメニューとエンタメ性を融合することで、成功を収めています。家族連れのリピーターを増やし、今後も成長が期待されるくら寿司の動向から目が離せません。新しい市場に挑戦する日本企業にとって、くら寿司の取り組みは大きなヒントとなるでしょう。