【注目レポート】マウイ島のバケレン全面禁止で経済に大打撃?住まい確保と観光依存のジレンマ

年間900億円規模の経済損失を生む可能性があるとのレポートが
発表されました

アロハ!
ハワイ・マウイ島では、短期バケーションレンタル(通称バケレン)を全面的に禁止する動きが加速しています。

「ローカルの住まいを取り戻したい」——そんな善意から始まった政策提案が、実は年間900億円規模の経済損失を生む可能性があるとのレポートが発表されました。

今回は、ハワイ大学経済研究機構(UHERO)が発表した最新レポートをもとに、今マウイで何が起きているのかをわかりやすく解説します!


UHEROの試算によると、マウイ島で提案されている「約7,200戸の短期レンタル物件を住宅用途に転換する条例案」が実施されると、以下のような影響が予想されます:

指標影響予測
年間訪問者支出の減少約900億円(9億ドル)
失業者数の増加約1,900人
経済全体への影響4%の縮小
地方税収の減少固定資産税:年6,000万ドル/ホテル税&売上税:年1,500万ドル減少
マウイ全体の住宅価格下落20~40%の可能性

このインパクト、想像以上に大きいですよね?


背景には、2023年のラハイナ大火災があります。
約3,500戸の住宅が焼失し、ローカルの住宅不足は深刻化。マウイ郡のビッセン市長は「観光客向けに使われているバケレン物件を、本来の住民のために戻そう」と提案したのです。

彼の言葉を借りれば、

「これは“反観光”ではなく、“住民優先”の政策です。マウイをマウイらしく保つための道です」

条例案「ビル9」はすでにマウイ・モロカイ・ラナイの計画委員会で全会一致で承認されており、現在はマウイ郡議会での審議段階に入っています。


今回の対象となるのは、通称「ミナトヤ・リスト」と呼ばれる7,167戸の物件群。

これらは本来、アパート用途にゾーニングされた土地に建つコンドミニアムで、もともとはリゾート目的で建設されたものが多く、後に短期レンタルの特例許可を得た歴史があります。

この特例を撤回することで、最大6,127戸が長期住宅ストックに転用可能とされており、これはマウイの住宅供給にとって10年分の開発に相当すると言われています。


今回の政策によって期待されるのは、家賃の抑制と住宅の手の届きやすさの向上。

ただし、**コンドミニアム価格の下落(最大40%)**が予測されており、既存オーナーへの影響も無視できません。

さらに、これらの物件の約85%が州外の投資家の所有。とはいえ、影響はマウイ全体の不動産市場に及ぶと見られています。


UHEROは条例案に対する代替的アプローチも提示しています:

① 段階的廃止(フェーズアウト)

一気にバケレンを禁止するのではなく、徐々に減らすことで経済への衝撃を和らげる。

② バケレン税の増税

短期レンタルに対して高い税率を課すことで、自然と長期住宅への転用を促す。

③ 営業ライセンスのオークション制

一定数のバケレン営業権を有料で発行し、税収を住宅整備に回す。

これらは「全面禁止」よりも柔軟で実効性のある政策として注目されています。


観光や不動産に関心のある富裕層にとって、今回の条例案は“痛みと可能性”の両面があります。


今回のバケレン禁止案は、観光と生活のバランスを問う**“マウイらしさ”の再構築**の一歩とも言えます。

観光だけでなく、地域の暮らしや文化、コミュニティを守りながら、いかに持続可能な未来を描けるか——それが今、マウイに突き付けられている問いです。