米スターウッド、ファンド資金繰り難 不動産市況悪化で

新潟米の輸出を加速


【ニューヨーク=竹内弘文】
米大手不動産ファンドのスターウッド・キャピタル・グループが運営する私募の不動産投資信託(REIT)の資金繰り難が表面化してきた。2024年1〜3月期まで6四半期連続で資金流出超となった。米住宅市場の軟調を懸念した投資家の資金引き揚げが続く。

資金捻出のため物件の投げ売りが出れば市場をさらに冷やしかねない。
資金逼迫が明らかになったのは「SREIT」と呼ばれる富裕層向けファンド。18年に設定し、足元の純資産総額は約99億ドル(約1兆5500億円)。投資対象のほとんどは米国の不動産で、約半分を集合住宅で運用している。投資先はフロリダ州やテキサス州など米南部に集中する。

同ファンドが前週発表した報告書によると、現預金や流動有価証券の保有額に未使用の融資枠を合算した手元流動性は4月末時点で約7億5200万ドルとなり、2023年末時点の約11億ドルから急速に減少した。

純資産総額対比では8%となり、同比率はコロナ禍の21年末(4%)以来の低水準となった。
投資家の解約請求が資金減少に拍車をかけている。ファンドの資金流出入を四半期ごとにみると、22年7〜9月期までは流入超だったのが22年10〜12月期以降は流出超が定着した。

急激な資金流出を防ぐため、SREITは月次の解約額を純資産総額の2%までとするなど一定の制限を設けている。上限を超える解約請求が続いているため、4月は請求額の約4割しか解約に応じていない。現状のペースが続けば新たな資金調達をしない限り数カ月後に資金が払底する。

米南部ではコロナ禍の人口流入により一時的に賃貸需要が急増したが、足元では収まってきた。主要都市の賃料は減少に転じ、SREITの月次運用成績は22年秋からマイナスに転落する月が目立つ。

物件価格が下落する地域も出てきた。米シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所の集計では、テキサス州オースティンの住宅価格は4月に前年同月比3.5%下落となった。担保価値の下落に金利水準の上昇も加わり、ファンドが調達していた不動産ローンの借り換えハードルは高まっている。

住宅売買マッチングを手掛ける米不動産フィンテック、ルービックの共同創業者トマソ・モンタグニ氏は、資金繰りに窮したファンドは「保有する住宅の一部を売却するプレッシャーにさらされている」と話す。まとまった物件の売却が出ると需給の緩みにつながり、さらに担保価値を下落させるという悪循環に陥りかねない。

SREITと同様の仕組みを持つファンドも資金流出の圧力が継続している。米大手投資ファンド、ブラックストーンが運用し590億ドルの純資産総額を持つBREITも24年1〜3月期に約24億ドルの資金流出超となった。