パンパシHD、北米アジアに140店 格安店「ドンキ」が軸

ディスカウント店「ドン・キホーテ」

2024/3/7 19:31 日本経済新聞 電子版

ディスカウント店「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(HD)は2025年6月期までに海外で約140店の体制にする。インフレ下の北米を中心にディスカウント店を広げ、23年6月期比で3割拡大する計画だ。インフレで米国などでも節約志向は強まる。日本式の格安店で攻める。


25年6月期までに142店と店舗を現状の3割増やす。25年6月期の海外での売上高は、23年6月期比17%増の3700億円、営業利益は約3倍の270億円とする計画だ。23年6月期にはすでに105店舗と、100円均一を除く日系のディスカウント店としては初めて100店の大台を超えた。

米グアムに24年4月、現地最大級のディスカウント店を開業する予定だ。

面積1万6000平方メートル。ショッピングセンター(SC)形式で10店舗程度のテナントが入る。25年6月までに米国の大陸側とハワイなどで13店舗を追加する。海外店舗の過半を占める78店舗を北米で構えることになる。

パンパシHDは海外でドン・キホーテのほか、「ドンドンドンキ」など主に7種類の屋号でディスカウント店を展開する。海外店は日本から直輸入した畜産・農水産物を中心とした食材店を特徴とする。
北米はイオンやダイエーなど日本の大手小売業が挑戦と撤退を繰り返した市場だ。
パンパシHDは06年に米ハワイ州のダイエー子会社を買収し、店舗を譲り受けて海外に初進出した。13年に米食品スーパーのマルカイコーポレーションを買収するなどで店舗網を広げた。現在はハワイとカリフォルニア州に「ドン・キホーテ」「トウキョウセントラル」などを展開している。

日系小売りの海外は中国や東南アジアが主戦場だ。セブン&アイ・ホールディングスが21年に米ガソリンスタンド併設型コンビニエンスストア大手の「スピードウェイ」を買収した。05年に米発祥のセブンイレブンを買収するなどで北米に約1万5000店舗を抱え、アジア・オセアニアで約4万7000店を展開するのと比べて店舗は少ない。

ローソンは米ハワイ州に2店舗のみ。百貨店では三越伊勢丹HDが米フロリダ州のウォルトディズニーワールド内に「オーランド三越」を構えるだけだ。
日系小売企業では100円ショップの「ダイソー」を運営する大創産業やイオンの存在感は大きいがいずれもアジアが主体だ。大創産業は北米で100店強、アジアで約600店など海外で約1000店舗を持つ。

イオンは12年に仏カルフールのマレーシア事業を買収。譲り受けた店舗をディスカウント店「インビッグ」として21店舗を運営しており、今後も広げる。
パンパシHDは国内に約620店舗を構え全体の8割強を占める。営業利益の9割を日本で稼ぐ。安田隆夫創業会長兼最高顧問は「日本は少子高齢化と人口減の市場だ。日本人の胃袋は縮小するばかり。日本の畜産・農水産物を維持するには外で売るしか方法がない」と話す。今後は海外シフトを加速する考えだ。

インフレ下でディスカウント店の需要は高まり、世界での競争環境は厳しい。独調査会社スタティスタによると、ディスカウント店の世界大手は首位が米ウォルマート、2位に米コストコ・ホールセール、3位に米ターゲットと上位5社まで米国勢が占める。日系企業は8位にパンパシHDが入るのみだ。

安売りが特徴のディスカウント店市場は26年に世界の小売市場の約2%を占めるとの予測もある。パンパシHDは日本や東南アジアなどで培った店舗モデルを洗練し、ディスカウント王国である北米でいかに存在感を出せるかが当面の課題になる。

何かご質問等あればお気軽にお問い合わせください。

ハワイビジネス情報館